海外赴任などで海外に出国する場合、基本的にあらゆる証券口座において金融資産の売買等に一定の制限がかかりますが、在外公館等に赴任する公務員の場合、日本に居住していない人(非居住者)とみなされず、そういった制限を受けない場合があります。
本記事では、今後外国の在外公館や領事館に赴任する公務員の場合、どの証券口座を利用することが最も良いのかを検討していきたいと思います。
結論から言えば、公務員ご本人はSBI証券、ご家族は野村證券、というような選択肢を検討するのが一案である良いと思っております。その理由や詳細を以下記載していきたいと思います。
目次
海外赴任する公務員は「非居住者」にならない?
在外公館等に赴任する国家公務員の場合、日本国内に居住しない人(非居住者)とみなされず、したがって日本国内に居住している人(居住者)とみなされ、日本国内にいるのと同じように証券口座を維持できることがあります。
財務省通達『外国為替法令の解釈及び運用について』において「本邦の在外公館に勤務する目的で出国し外国に滞在する者は、居住者として取り扱う。」とあることなど基づきつつ、各証券会社が各々運用規定に定めているため、そのような外交官が一律に「居住者」として扱われて何らの制約も受けないか、というと、「そういうわけではない」というのが、筆者が調べた限りの現状と言えます。
また、国家公務員や地方公務員、みなし公務員など、「本邦の在外公館に勤務する目的で出国し外国に滞在する者」を一律に扱っているかどうかもそれぞれの証券会社によって異なるようです。
それでは、それぞれの証券会社の運用はどのようになっているのか。以下で具体的に見ていきましょう。
証券会社の運用はどのようになっているか?
本記事では、筆者が現時点までで調べた三菱UFJ国際投信、楽天証券、SBI証券、野村證券についてのみ、筆者の知り得た限りで、結果を紹介したいと思います。
なお、各会社の運用方針も変わっていくかもしれず、また前述のとおり海外赴任時のステータスで扱いが変わる可能性もあるので、より確信的な情報を得るには直接証券会社に問い合わせることをお勧めいたします。
三菱UFJ国際投信
三菱UFJ国際投信の場合、照会した際の回答は、公務員かどうかに関わらず、海外に赴任等で出国する場合、口座は閉鎖していただきます、という、たいへん単刀直入な答えでした。在外公館勤務、また海外での滞在予定年数などにかかわらず、口座は閉鎖していただきます、という、何とも清々しい答えでした。
従って、このようなケースでは、どのような方も、出国後の口座維持は不可という結論になります。
楽天証券
楽天証券の海外出国時の手続きはこちらに掲載してくれています。
同社に照会したところ、在外公館等に勤務する公務員の場合、一部制約が免除される(通常海外出国者の保有できる商品は「日本株式、個人向け国債のみ」に限定されるところ、在外公館等に勤務する公務員の場合その制約がなくなる、など)ようでしたが、「常任代理人の選定」はその種の公務員の場合も必要ということで、日本にいる人と全く同じ扱いにはならないようでした。
詳細は以下の記事にも掲載しているため、『証券口座 海外赴任者にとっての制約例』の項をご参照いただければ幸いです。
ちなみに、上記の記事を書いた際(2022年1月23日頃)には、楽天証券の「海外出国のお手続き」のページには、「※在外公館、領事館に赴任する方の場合は、別途お問い合わせください」といった注意書きがあったのですが、この記事を書いている現在(2022年2月上旬)には、その記載は削除されているようです・・・
SBI証券
SBI証券の海外赴任時の扱いはこちらに掲載してくれています。
上記のページの「非居住者の定義」をクリックして展開しますと、外為法の記載のとおり、在外公館に勤務する目的で出国し、外国に滞在する人は「居住者」として扱われる、と書いてあります。
・上記に掲げる者で、事務連絡、休暇等のため一時帰国し、その滞在期間が6ヶ月未満の者(但し、上記に関わらず、本邦の在外公館に勤務する目的で出国し、外国に滞在する方は、「居住者」として扱われます)
SBI証券
電話で問い合わせたところ、在外公館に勤務する外交官の場合、「居住者」として扱われるので、2親等以内の親族の住所を登録するなど、一定の手続きを行えば、日本国内に居住する人と同じように、NISA口座も含め、証券口座の維持が可能、という答えでした。
手数料の低さなどから最も人気の高いネット証券といえるSBI証券のこの情報は、今後海外赴任を予定する公務員にとってはかなり朗報なのではないでしょうか。
野村證券
野村證券の海外赴任者のための案内は、同社の「海外に転出されるお客様の口座に関するご案内」で確認することができます。
野村證券も、ネットで口座開設を行う「ネット&コール」の場合で、在外公館に勤務する国家公務員の場合、一定の手続きを行えば、日本国内に居住する人と同じように、NISA口座も含め、証券口座の維持が可能、というのが答えでした。
詳細は、以下の記事の『野村證券(ネット&コール)の場合』の項を参照いただければ幸いです。
ちなみに、野村證券の電話のご対応は、丁寧で、確認すべきは確認して明確に答える、信頼できるものでした。手数料が高い点がネックですが、こうした対応がさすが、と思いました。
赴任者本人の家族の扱いは?
在外公館に外交官として赴任する家族は、SBI証券、野村証券ともに、「非居住者」の扱いとなります。従って、在外公館に外交官として赴任する方のご家族の証券口座については、別に考える必要があります。
筆者が現時点までに調べた限りは、「非居住者」でも維持できる口座について、帰国後に特定口座に戻せる野村證券が一案なのかなと思っております。詳細は、上記でも紹介した記事をご参照いただければと思います。
海外赴任する公務員にとってベストな証券口座は?
上記に挙げた証券口座の中では、SBI証券か野村證券(ネット&コール)であれば、在外公館に勤務する目的で出国する公務員は、出国時に適切な手続きを行えば、国内在住時と同じように口座の維持が可能であるようです。
この2社で運用するだけでも、そうした公務員の方は「海外出国時に長期保有したかった金融商品を急いで全て売却しないといけなかった!」ということにはならないと思うので、及第点以上と言えるかと思います。
ここから先は、純粋にSBI証券と野村證券(ネット&コール)のどちらのサービスをより好むか、ということになります。こうした比較をしてくれているブログ等はネット上に多数存在しますので、色々見られるのが良いと思いますが、筆者は、手数料の安さを重視し、SBI証券がベストであると考えます。
最近は楽天証券も改悪が続いており、SBI証券の利用者も増えていきそうです。一方で、SBI証券も、楽天証券同様、ある程度利用者の確保ができたらサービスを改悪していく可能性はあり得ますので、今後の動きは要チェックになります。
また、ご家族の場合は、上記で述べたとおり、野村證券(ネット&コール)が一案になります。
SBI証券と野村證券(ネット&コール)の口座開設ができるページを、以下掲載しておきたいと思います。
まとめ
本記事では、今後外国の在外公館や領事館に赴任する公務員の場合、どの証券口座を利用することが最も良いのかを検討していきました。
本記事の結論として、赴任者ご本人はSBI証券、ご家族は野村證券、という選択肢が一案かと思います。
ネット証券の運用ルールやサービスも年々変わっていくこともあると思いますので、あくまで現時点での、また筆者が調べた限りでの情報として、ご参照いただければ幸いです。
この記事が少しでも参考になれば幸いです!